横浜の不動産市場は全体的に堅調ですが、エリアによる価格動向の違いが大きいのが特徴です。親や祖父母から受け継いだ土地・建物の売却が「どのくらいで売れそうか」というのはとても気になるところだと思います。
ここでは、横浜市内で相続した不動産を売却する際に知っておくべきポイントを、最新の市場動向から具体的な手続き、エリアや物件タイプ別の戦略まで解説します。
横浜エリアにおける不動産の現状と市場動向
横浜市の不動産を買いたい人は増えており、長期間にわたって値上がりしています。市全体の平均価格は直近で1年間に3%以上も上昇しました。区別の平均価格で見ても、都市部とそれ以外で幅に差があるとはいえ、すべての区で上昇し続けています。
横浜市の不動産市場の特徴と最新動向
横浜市の不動産市場は2024年も価格上昇の傾向が続いています。市全体の平均を見ると、住宅地の価格は前年比で約3.5%上昇しました。一方、商業地(=飲食店やオフィスが建つ地域)の価格上昇率はさらに高く、市全体で平均約5.3%の上昇を記録しています。
より長期的な視点で見ると、過去5年間(2020年〜2024年)の累計では、住宅地は約10.60%の上昇、商業地は約15.18%の上昇となりました。過去10年間(2015年〜2024年)では、住宅地は約18.95%、商業地は約25.89%上昇しています。これらのデータから、市内全域で不動産価値が中長期的にも底堅く推移しており、とくに商業活動の中心となるエリアでの価値向上がより顕著であることがうかがえます。
区別の価格推移
横浜市内で住宅地価格の変動率が最も高かったのは中区で、前年比8.0%の上昇を記録しました。次いで西区が7.4%、神奈川区が5.7%と、都心部に近いエリアでの高い伸びが目立ちます。これに対し、金沢区(1.6%)、瀬谷区(2.0%)、磯子区や港南区(共に2.1%)など、比較的郊外に位置するエリアでは上昇率が緩やかでした。
商業地の価格変動率は、住宅地以上にエリア間の差が大きくなっています。最も上昇率が高かったのは中区で8.7%の上昇でした。神奈川区(8.4%)、西区(8.3%)も高い伸びを示しており、これらの中心商業エリアにおける需要の強さがうかがえます。一方で、栄区と都筑区は共に2.9%の上昇にとどまり、市内で最も低い変動率でした。次いで泉区(3.2%)、青葉区(3.3%)なども比較的落ち着いた動きを見せています。
相続不動産の売却タイミングと市場予測
2025年は人口の多い「団塊の世代」が75歳以上となる年であり、親や祖父母から受け継いだ土地・建物を売りたいと考える人が増える予測されています。郊外エリアでは、売りたい人の数が買いたい人の数を大きく上回り、価格が下落するかもしれません。
さらに考えたいのは、購入意欲に直結する金利の問題です。住宅ローン金利は2024年後半から緩やかな上昇傾向にあり、2025年4月現在、主要銀行の固定金利は2.0〜2.5%程度となっています。金利上昇は買い手の意欲に影響を与えるため、さらに上昇する前の売却を検討するのもひとつの選択肢です。
相続不動産を売却する際は、相続税の申告期限(もともとの持ち主が亡くなったことを知った日から10か月以内)を考えてスケジュールを立てましょう。相続税を支払うための資金を確保するために早く売りたいときは、市場価格より低めの価格設定になる可能性もあるため、早めの査定と売却活動の開始が望ましいでしょう。
季節要因も売却タイミングの重要な要素です。横浜市場では例年、3月(年度末の転勤シーズン)と9月(秋の住み替えシーズン)に買いたい人が増加する傾向があります。これらの時期に合わせて1か月から2か月ほど前から売り出し準備を始めることで、より多くの購入検討者に情報が届くようになるでしょう。
今後5年間の横浜市の不動産価格は、エリアによって二極化が進むと予測されています。みなとみらいや横浜駅周辺の利便性の高いエリアは引き続き堅調な需要が見込まれる一方、郊外エリアでは人口減少の影響もあり、立地条件の良くない物件は価格下落の可能性があります。相続した不動産の立地や状態を正確に評価し、最適な売却タイミングを見極めることが重要です。
相続不動産を売却するメリット
相続した土地・建物を売却するメリットは、不要な不動産を所有することによる負担からの解放が挙げられます。具体的には、次のようなことが言えるでしょう。
- 相続税や固定資産税などの税負担から解放される
- 不動産を管理するための手間や費用から解放される
- 遺産分割協議をスムーズに進められる(不動産はそのままだと分割しにくいが、現金だと簡単)
現在、亡くなった人が居住していた物件であることを前提に、相続した空き家を3年以内に売却すると最大3,000万円の特別控除が受けられます。この制度を活用すれば、譲渡所得税の負担を大幅に軽減し、手元に残る利益を最大化できるでしょう。
横浜エリア別・物件タイプ別の売却ポイント
横浜市は18区からなる広大な都市であり、地域によって不動産の特性や価値が大きく異なります。相続した不動産を売却する際は、その物件が位置する地域の特性を理解し、物件の種類も考えて売り方を判断することが大切です。
横浜市内18区の地域特性と売り方
横浜市場での需要傾向を見ると、3LDK・70〜85㎡程度の間取りがファミリー層に人気があり、とくに港北区や青葉区の物件が支持されています。一方、みなとみらい地区では100㎡超の広い間取りも高い需要があります。
それ以外でも横浜市内の地域特性は多様で、エリアごとに最適な売却戦略が異なります。路線図や地域の状況で示すと、次のように言えます。
■東急東横線・田園都市線沿線(青葉区・港北区など)
教育環境の良さと東京へのアクセスの良さから子育て世代に人気があります。学区情報や周辺の教育施設、公園などの生活環境を詳細に紹介することで、ファミリー層の関心を引くことができます。
■京浜東北線・横浜線沿線(神奈川区・鶴見区北部など)
通勤利便性が高く、比較的手頃な価格帯の物件が多いエリアです。東京駅や品川駅へのアクセス時間や、駅からの距離を重視した情報提供が有効です。
■郊外住宅地(戸塚区・港南区・泉区など)
豊かな自然環境や広い居住空間、コストパフォーマンスの高さをアピールすることが重要です。特に戸塚区は横浜市内でも取引件数が多く、適正価格での出品が成約率を高めるポイントとなります。
■工業地域(鶴見区南部・神奈川区臨海部)
土地の用途転換による価値向上の可能性を示すことが売却戦略として効果的です。特に物流施設や商業施設への転用可能性を示せる土地は高値での売却が期待できます。
相続したマンションを売却するときのポイントと注意点
相続で受け継いだマンションは、築年数の古さのせいで売却で不利となる傾向です。古いマンションでも売りやすくするには、古い部屋でも快適に住めることをアピールする必要があります。売りやすくするためのポイントとして、下記の2点が挙げられます。
■管理状況や修繕積立金の残高
管理が行き届いている物件や、大規模修繕をした後の物件、修繕積立金(=各部屋の所有者から集めるメンテナンスの費用)が十分に積み立てられている物件は、買い手に安心感を与え、高値での売却が期待できます。
■売却前のリフォーム
全面改装よりも水回り(キッチン・浴室・トイレ)の清潔感を高める部分リフォームが費用対効果に優れています。また、壁紙の張替えやフローリングのメンテナンスも比較的低コストで印象を大きく改善できます。
戸建て・土地売却のポイントと注意点
相続で受け継いだ戸建てや土地は、敷地上にある建物(=家)の老朽化のせいで売却で不利となる傾向です。売りやすくするには、土地・建物の両方について価値を調べ、買主にとってデメリットとなる要因があれば対処しつつ、売り方を検討する必要があります。具体的には、次のような対応を取りたいところです。
■建物の状態評価をする
築20年以内の建物であれば、適切なメンテナンスにより価値を維持できますが、築30年を超える木造住宅の場合、建物としての価値はほとんどなく、解体を前提とした売却も検討すべきです。解体の要否は、耐震性能や設備の状態、外観などを総合的に判断し、必要に応じて調査を依頼することも有効です。
■境界確定をしておく
未確定の場合、売却前に隣地所有者との境界確定(敷地の境目=境界について判断するための手続き)を行う必要があります。とくに相続不動産では境界に関するトラブルが発生しやすいため、専門家(土地家屋調査士)に依頼して確実に進めることが重要です。
■古家付き土地と更地の違い
建物にほとんど価値がない場合、土地価格のみで建物ごと取引する「古家つき土地」という売り方か、建物を解体して更地で売るかの二者択一となります。一般的に更地の方が高く売却できますが、解体費用(横浜市内の一般的な戸建てで150〜250万円程度)と3,000万円特別控除の適用可能性を考慮して判断する必要があります。
なお、土地の基本的な価値は「形状」や「向き」のほか「面積」などが決め手になります。横浜市港北区や青葉区の住宅地では、南向きで日当たりの良い土地は平均より10%から15%ほど高く売却できることもあります。
まとめ
横浜の不動産価格は全体的に上昇傾向にありますが、中区や西区などの中心部と郊外エリアでは価格変動に大きな差が見られます。相続不動産の売却は、税負担の軽減や遺産分割の円滑化といったメリットがある一方で、相続税の申告期限や価格の動き・物件の種類に合った売却プランを立てることが大切です。
相続した不動産の売却手続きは複雑で、税金や法律に関する専門知識も求められます。現在の状況に最適な方法で、スムーズかつ有利に売却を進めるためには、地域事情に精通した専門家への相談が不可欠です。大切な方から受け継いだ不動産に関するお悩みやご不安は、お気軽に横浜スタイルまでお問い合わせください。