横浜の不動産市場は2025年、大きな転換期を迎えています。建築基準法改正や金融政策の変更により、不動産価格への影響が予想される中、エリアによって異なる市場動向が見られます。ここでは、最新の統計データと市場分析をもとに、横浜市内の住宅地価格やマンション・戸建て価格の動向を解説します。
横浜の住宅地価格の動向(令和7年1月時点)
横浜市の住宅地価格は、区域によって大きな価格差が生じています。とくに日吉や川崎市に隣接する地域で上昇が目立つ一方、郊外部では下落傾向が見られます。新型コロナウイルスの影響から回復基調にある中、利便性の高い地域とそれ以外の地域で二極化が進んでいることが特徴です。
価格上昇が大きかったエリアと実勢価格
直近1年間で最も上昇率が高かったのは港北区日吉2丁目(日吉駅付近)で、前年同月比10.8%増の205万円/坪となりました。続いて川崎市に隣接する幸区戸手本町2丁目(矢向駅付近)で11.1%増の150万円/坪、麻生区上麻生2丁目(新百合ヶ丘駅)で17.2%増の170万円/坪と、いずれも交通利便性の高いエリアで大きな上昇が見られました。
価格下落が大きかったエリアと実勢価格
直近1年間で価格下落が顕著だったのは栄区本郷台2丁目(本郷台駅付近)で、前年同月比▲5.1%の75万円/坪まで下落しました。旭区四季美台(二俣川駅付近)でも▲2.7%の73万円/坪、緑区いぶき野(長津田駅付近)で▲2.9%の68万円/坪と、郊外部を中心に下落傾向が見られます。
価格が安定しているエリアと実勢価格
青葉区美しが丘5丁目(たまプラーザ駅付近)は前年同月比3.0%増の170万円/坪、都筑区茅ヶ崎南5丁目(センター南駅付近)は3.8%増の135万円/坪と、緩やかな上昇にとどまっています。また、鶴見区や保土ヶ谷区など、比較的古くから開発が進んだエリアでは、価格変動が小さく安定した推移を示しています。
エリア別・不動産種別の価格推移
横浜市の不動産価格は、物件の種類によって異なる動きを見せています。中古マンション価格は上昇傾向が続く一方、新築一戸建ては建築コストの上昇を背景に高止まりの状況です。エリアによる二極化も進んでおり、投資判断には慎重な分析が必要となっています。
マンション価格の推移と特徴
横浜市の中古マンション価格(70㎡換算)は、2024年に前年比▲1.1%となる474.7万円まで下落しました。ただし、みなとみらい地区や横浜駅周辺など、利便性の高いエリアでは需要が堅調です。なお、築年数の経過した古い物件では、大規模修繕工事の必要性やマンション管理の方法の違いにより、価格差が広がる傾向にあります。
戸建て住宅価格の推移と特徴
2025年1月時点の横浜市における新築一戸建ての平均価格は、前月比+2.2%の4,720万円まで上昇しています。特に東京23区と都下では上昇が著しく、それぞれ19.7%アップ、23.1%アップと大幅な上昇となりました。一方、神奈川県や埼玉県では0.6%アップ、8.2%アップと比較的緩やかな上昇にとどまっています。建築費の高騰や人手不足の影響により、今後も価格上昇圧力が続く可能性が高いと見られます。
横浜の不動産価格の今後の見通し
横浜市の不動産市場は、人口動態や経済指標から見ると、エリアによって異なる展開が予想されます。特にみなとみらい地区や横浜駅周辺では再開発の進展により、不動産価値の上昇が期待されます。一方で、金利上昇や建築コストの高騰など、不動産市場全体に影響を与えるリスク要因にも注意が必要です。
横浜市の人口動態と経済指標
横浜市の人口は2021年の約378万人をピークに、緩やかな減少に転じる見通しです。特に生産年齢人口は2025年の239.6万人をピークに減少し、2035年には222.4万人まで落ち込むと予測されています。一方で経済面では、市内総生産が14兆円台で安定的に推移しており、特にみなとみらい21地区では年間約2兆846億円の経済波及効果を生み出しています。
エリア別の将来性予測
みなとみらい21地区では、横浜シンフォステージ(延床面積18.3万㎡)の完成や、60・61街区の大規模開発など、複数の再開発プロジェクトが進行中です。関内地区でも旧市庁舎跡地の再開発(総延床面積約12.9万㎡)が2026年春の開業を予定しており、エリアの価値向上が期待されます。
不動産の需要の予想
日本銀行のマイナス金利政策が解除されたことで、不動産投資市場にも変化の兆しが見られます。住宅ローン金利は少しずつ上昇傾向にあり、買主が払う費用が増加することで、売買ともに難しくなるかもしれません。一方で、建築費用の増加は新築物件の供給を減らす可能性があり、中古物件の価値を相対的に高める可能性があります。
不動産を売買するときの判断材料・チェックポイント
不動産の売買においては、物件そのものの価値だけでなく、周辺環境や将来性も含めた総合的な判断が必要です。2025年は建築基準法改正や税制改正など、不動産市場に大きな影響を与える制度変更が予定されています。これらの要因を踏まえながら、物件選びの基準や売買のタイミングを検討していく必要があるでしょう。
物件の価格が適切か判断するときの方法
売買したい物件の価格が適切か判断するときは、国土交通省が公表する「地価公示価格」や「都道府県地価調査価格」を確認すると良いでしょう。いずれも不動産鑑定士が判断した適切な価格であり、おおよその値段の手がかりを知ることができます。
注意したいのは、上記の価格と実際に取引されるときの価格(=実勢価格)には差がある点です。実勢価格をつかむときは、物件と近い条件の取引事例との比較が欠かせません。さらに、将来の価値を予測するときは、周辺の再開発計画やインフラ整備の状況も考慮に入れましょう。
エリア選定で重視すべき要素
横浜市内での物件選びでは、とくに交通利便性が重要なポイントとなります。みなとみらい線や相鉄・東急直通線など、新たな路線の開通による利便性の向上も見られます。商業施設については、みなとみらい地区や横浜駅周辺の大型商業施設に加え、最寄り駅周辺の商店街の活気も確認が必要です。また、地域の将来性を評価する際は、市の都市計画マスタープランで示された開発方針も参考になります。
売却・購入のタイミング
2025年は不動産価格に影響を与える制度改正が集中するため、その前後で相場に変化があると予想されます。建築基準法改正(新築物件の省エネ基準達成の義務化など)による建築費用の上昇は、価格押し上げ要因となるでしょう。先に紹介した住宅ローン金利上昇などの要因も考慮すると、直近で新築物件の購入を検討している場合は、2025年4月の建築基準法改正前がひとつの目安となります。
まとめ
2025年の横浜の不動産市場は、地域による二極化がさらに進むことが予想されます。みなとみらい地区や横浜駅周辺では再開発の進展により不動産価値の上昇が期待される一方、郊外部では人口減少の影響が徐々に顕在化しつつあります。
不動産の売買を検討する際は、法改正や住宅ローン金利などといった外部環境の変化に加え、エリアごとの将来性や個別物件の状況を十分に見極めることが重要です。「最新の情報が知りたい」「情報の集め方がわからない」といった場合には、地域の取引に詳しい不動産会社に相談すると良いでしょう。