離婚するときの財産分与のため夫婦の家を売るときは「いつから売却手続きを始めるべきか」「売却と代金の分割を巡ってトラブルにならないか」などの心配ごとがあるのではないでしょうか。
スムーズに2人の関係を清算するため、基本的な財産分与のルールとトラブルの例を踏まえて、どんなことに気をつけるべきか考えてみましょう。
離婚時の不動産売却で知っておくべき前提知識
離婚にともない不動産を売却する必要があるときは、基本的な財産分与のルールを押さえつつ、売却手続きを進めるタイミングを見極めるようにしましょう。確認しておきたいのは、以下のようなポイントです。
離婚と不動産売却のベストなタイミングとは
離婚する夫婦が住んでいた家を売る場合、最低限、財産分与を請求する権利の時効(※離婚成立から2年)に間に合わせなくてはなりません。
実際のところ、多くの場合に問題となるのは「家を売るとしたら離婚前後のどちらがいいのか」といった問題です。これに絡み、売却完了を離婚日程と合わせられるのか、いつ頃に売れば売れやすいのかなどの悩みもあるでしょう。
■売るタイミングは離婚前or離婚後のどちらがいいのか
……離婚前の売却では夫婦間の連絡が取りやすい反面、感情的な対立が手続きを阻むかもしれません。一方、離婚後の売却は手続きが明確になりますが、住宅ローン契約の内容や家の名義の状況をしっかり確認しないと、夫婦のあいだでトラブルが起きる可能性があります。
■売却完了と離婚日程を合わせるには
……家の売却では、不動産会社への申し込みから売却完了までのあいだで3か月から6か月ほど時間がかかります。離婚成立の6か月前に申し込み、少なくとも離婚成立日までに転居しておくのがスムーズです。ただし、転居先の入居費用や、内見(=購入を検討する人に物件の状況を見せること)への対応についても考慮しなければなりません。
■いつ頃が売れやすいのか
……住宅市場の動向を考慮すると、4月から6月の春先が売れやすい時期ですが、売主である夫婦とその家族の状況に合わせるのが大切です。首都圏で人気のある物件であれば、上記時期にこだわらずともすぐに買い手が見つかり、希望する内容と近い条件で売れる可能性があります。
家の売却活動を始める時期 | メリット | デメリット |
離婚前 | 夫婦間で連絡が取りやすい | 夫婦の対立が手続に影響する可能性 |
離婚後 | やるべきことが明確で手続きがスムーズ | ローンや家の権利の状況をめぐってトラブルが再燃する恐れ |
家の財産分与の基本的なルール
離婚する夫婦の財産分与では「そもそも何が分与の対象なのか」を理解しておかなくてはなりません。夫婦とその家族の持ち家であれば、結婚から離婚までの婚姻期間中に購入したものが財産分与の対象です。結婚前に一方が自分の資金で購入した物件については、配偶者が支払ったローンの部分だけ分割します。
夫婦の家を売り、その代金を分割する予定を組むケースでは、住宅ローンの返済状況によって財産分与の考え方が分かります。家を売るときに住宅ローンの完済ができていないときは、財産分与に先だって、売却で得た代金で完済する必要があるからです。
■住宅ローン完済後とに売却代金が一部残る場合
……住宅ローン残債(残りの総返済額)を払ったあとも売却代金が残る場合は「オーバーローン」と呼ばれます。このときは、残った額を離婚協議・離婚調停などの内容に従って分割します。
■住宅ローン完済後とに売却代金が残らない場合
……住宅ローン残債と売却代金が同額だった場合は、夫婦で分割すべきものはありません。売却代金で完済しきれなかった場合には、その残債を離婚協議・離婚調停などの内容に沿った割合でそれぞれ負担します。
離婚時の不動産売却でよくあるトラブル
離婚手続きと並行して不動産を売却する過程では、感情的な対立と法的な問題が複雑に絡み合います。金銭的な利害が直結するため、事前の対策なしに進めると重大なトラブルに発展するリスクがあります。
住宅ローン残債が売却金額を上回っている
住宅ローンの残債が売却価格を上回り、売っても完済できない状態を「アンダーローン」と呼びます。アンダーローンの状態では、売却にあたって住宅ローンを契約した銀行の同意が必要となり、売ること自体が難しいと言わざるを得ません。
上記のような場面では「一方の家として住み続けるのか、今後の返済額をどのようにしてそれぞれ負担するのか」といったもめ事が夫婦間で発生しがちです。
なお、最終手段として「任意売却」と呼ばれる方法もあります。住宅ローンを契約した銀行と今後の返済計画について話し合い、合意を得て売却する方法です。この方法でも、返済に関する負担の割合でもめる可能性があります。
売却手続き中に離婚協議が決裂してしまう
すでに説明したとおり、不動産を売るにあたっては3か月から6か月ほど(物件によってはそれ以上)の期間がかかるのが一般的です。このあいだに夫婦のあいだでもめ事が起き、売却できても関係を清算しきれないことがあります。
よくあるのは、不動産を売る方法に関して意見が分かれてしまうケースです。考えられるのは、一方が本当は売却を望んでいなかった(はっきりと同意したわけではなかった)、売却の条件について夫婦のあいだで希望が異なっていたなどの例が挙げられます。
上記のような決裂が起きると、売却手続きが滞る可能性があります。売るための活動をしてもらう不動産会社に対して預けた委任状(=本人に変わって行う手続きを明記した書面)が有効でなくなったり、不満のある人が訴えて家の仮差押えが行われたりするためです。
税金・諸費用の負担割合でもめる
家を売るときは、実にさまざまな出費が発生します。費用については、銀行・売る人・買う人とのあいだで権利を移すときの「登記」のための費用や、司法書士報酬などがあります。売って得た代金(※財産分与の対象)についても、確定申告したうえで譲渡所得税を支払わなくてはなりません。
最終的に夫婦それぞれ利益が得られるとしても、上記の費用・税金の負担をどう分割するか問題になることがあります。とくに離婚協議・離婚調停でまったく考慮していなかった場合は問題です。
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売却を成功させるためのポイント(売却時の費用と流れを確認する)
一般的な不動産売却でも注意すべきトラブル
離婚時の売却に限らず、不動産取引では常にリスクが伴います。特にマンションやアパートの売却では、建物の状態や管理規約に起因する問題が発生しやすい傾向があります。取引プロセスの各段階で起こり得るトラブルを事前に把握しておくことが重要です。
不動産会社とのトラブル
家を売るよう依頼した不動産会社とのトラブルで多いのが、仲介契約の内容や手数料に関するトラブルです。不動産会社と結ぶ媒介契約の種類によっては、ほかの会社に依頼することで契約違反となります。
家の買主が見つかったときに支払う仲介手数料についても、法律で定められた額を超えて請求される問題に要注意です。知らずに支払ってしまうことで、結果として夫婦の財産が減ってしまいます。
買主との支払いを巡るトラブル
夫婦の家を買う人が見つかった段階でも、支払いに関するトラブルに要注意です。支払いを待ってほしい、キャンセルしたいなどと言われ、売却のための手続きが振り出しに戻ってしまうことがあるのです。
家の買主が支払いに困る主な理由は、購入のためのローン審査に通らないことです。最低限、購入申し込み時に支払われて解約時に没収できる「手付金」をしっかり設定することや、キャンセル料などの定めを設けておくべきです。
買主との物件を巡るトラブル
夫婦の家が売れたあとの段階では、物件について買主からクレームが入ることがあります。その多くは、設備が揃っていなかったり、道路および隣地との権利に関するトラブルがあったりすることが理由です。これらが原因で買主の購入目的を果たせない場合、契約不適合責任と呼ばれるものが発生し、損害賠償などを求められることがあります。
とくに集合住宅(マンションなど)売却では、専有部分と共用部分の境界が問題になるケースが少なくありません。バルコニーの使用制限や、駐車場の権利関係、設備の状況など、管理規約でくまなく確認して説明できるようにしたいところです。
離婚時の不動産売却でトラブルを防ぐには
離婚に伴う不動産売却でトラブルを回避するには、感情的な対立を抑えつつ法的・金銭的な取り決めを明確にすることが不可欠です。専門家を交えた事前準備と文書化が重要な鍵を握ります。
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売却前に夫婦でチェックしたいポイント
売却する前に夫婦で確認しておきたいのは、売却の意思と条件です。事前に手続き全体を見通しておき、何について話し合うべきかリストアップしておくとよいでしょう。お互いに意見が揃った項目は、離婚協議書などに明記しておくべきです。
■売却前に夫婦で確認しておくべき項目(一例)
- 双方ともに売却するつもりでいるのか
- どこの不動産会社に依頼するつもりなのか
- 売却するにあたって、希望する条件にズレがないか
- いくらくらい利益が出そうか(住宅ローン残債と査定額から計算)
- 利益または住宅ローンの返済負担が生じる場合、どう分割するのか
- 不動産売却に必要な費用と税金は、いくらかかり、どう分割するのか
売却手続きで注意すべきポイント
不動産会社との契約して売却を進めるときは、締結する契約の種類(一般媒介契約・専属媒介契約・専属専任媒介契約)を確認しましょう。確認するときは、売主である夫婦に課される制限をチェックしておくことが大切です。仲介手数料の上限を知り、その範囲で金額が出ているのか確かめるのも重要です。
ほかには、家に関する資料をできるだけ依頼先の不動産会社に提示することや、売ると決めたあとは家の状態をなるべく変えないようにすることも大事です。これらの対策により、買主とのトラブルの可能性を小さくできます。
もっとも重要なのは、信頼できる不動産会社を選ぶことです。手付金などの買主との契約トラブルを防ぐための方法や、諸事情を鑑みた売却の方向性を提案してもらえるからです。さらに地域の売買実績に詳しい会社を選ぶことで、夫婦の手元に残る財産がなるべく大きくなるよう販売活動が期待できます。
まとめ
離婚に伴う不動産売却では、事前の夫婦のあいだで意見をすり合わせておくことがもっとも大切です。これにあたっては、住宅ローンの状況と物件の売却見込み額、そして売却のためにかかる費用・税金を把握しておかなくてはなりません。さらに、外部とのトラブルを避けるため、不動産会社選びや物件の状況に関しても注意する必要があります。
財産分与のため持ち家を売るときは、安全な取引ができる信頼性の高さだけでなく、売主の事情への理解と地域の情報に通じた不動産会社を選ぶと安心です。
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