マイホームを住み替えたいと考えているものの、現在住んでいる自宅の住宅ローン返済がまだ残っているという方もいるのではないでしょうか。通常、自宅の売却代金などでローンを完済しない限り、新たに住宅ローンを組むことはできません。しかし、ダブルローンという手法を使えば、自宅売却を待たずに新居の住宅ローンを借り入れることが可能です。
この記事では、住宅ローンにおけるダブルローンとはどのようなものなのか解説するとともに、メリット・デメリットや借り入れの条件などを紹介します。ダブルローンと併せて検討したい「住み替えローン」についても解説するので、今後住み替えを予定している方はぜひご一読ください。
住宅ローンにおけるダブルローンとは?
まずは、住宅ローンにおけるダブルローンとはどのようなもので、ダブルローンとなる可能性があるのはどのようなケースなのか、基本を解説します。
2つの住宅ローンを並行して組む「ダブルローン」
そもそもダブルローンとは、その名のとおり、2つのローンを同時に借り入れることを指します。自宅の住宅ローン返済中に自動車ローンや教育ローンを借り入れるなど、ダブルローン自体は珍しいことではありません。
一方、住宅ローンにおけるダブルローンとは、現在住んでいる自宅の住宅ローンを返済しながら、新居の住宅ローンを新たに組むことをいいます。通常、住宅ローンは1人につき1本のみというのが原則ですが、いくつかのケースではダブルローンの活用が可能です。
ダブルローンになる2つのパターン
住宅ローンのダブルローンを組めるのは、大きく分けて次の2つのパターンです。
①住み替え
マイホームを住み替えたいと考えているものの、現在の自宅を売却できる時期が見通せない場合や、売却手続きに時間がかかると見込まれる場合、ダブルローンを利用できる可能性があります。
②2軒目の購入
自分の住むマイホームとは別に、親や子どもが住むための住宅やセカンドハウスを購入する場合にも、ダブルローンを利用できるケースがあります。なお、セカンドハウスとは、自宅が職場から遠い人が職場近くに購入する家や、数日に一度程度など頻繁に利用する家などを指すのが一般的です。
マイホームの住み替えでダブルローンを利用する3つのメリット
前述のとおり、マイホームを住み替える際にもダブルローンを利用できる可能性があります。住み替えでダブルローンを利用するメリットは主に次の3つです。
- 「買い先行」で新居購入を優先できる
- 仮住まいを確保する必要がない
- 空き家を自由に内覧してもらえるので自宅を売却しやすい
1. 「買い先行」で新居購入を優先できる
住宅ローンは1人1本しか組めないのが原則です。この原則にしたがえば、現在住んでいる自宅の売却手続きが完了してローンを完済できない限り、住宅ローンを使っての新居購入はできないことになります。
しかし、ダブルローンを組めば、自宅の売却前に新居の購入手続きを進める「買い先行」での住み替えが可能です。これにより、気に入った物件を買い逃す事態を防げるでしょう。
住み替えの2つの方法:「買い先行」と「売り先行」
方法 | 説明 |
買い先行 | 自宅売却が決まる前に、新居購入の手続きを進める方法 |
売り先行 | 自宅売却が完了してから、新居を購入する方法 |
2. 仮住まいを確保する必要がない
住み替えを売り先行で進める場合、自宅を引き渡してから新居に入居するまでの間、一時的な仮住まいを確保しなければなりません。賃貸住宅やホテルなどを仮住まいにする場合、期間中の住居費がかかるほか、自宅から仮住まい、仮住まいから新居への引越し費用もかかります。
ダブルローンを利用して買い先行で住み替えれば、自宅から新居へ直接引っ越せるため、仮住まいにかかる費用や手間を削減できるのもメリットです。
3. 空き家を自由に内覧してもらえるので自宅を売却しやすい
ダブルローンを使った買い先行での住み替えの場合、新居で暮らし始めてから、自宅の売却活動を本格化することになります。元の自宅がすでに空き家になった状態で売却活動を進められるので、購入希望者の内覧希望にも柔軟に対応できるでしょう。
加えて、退去してきれいに掃除した状態で内覧してもらえるため、購入希望者の印象が良くなりやすいのもポイントです。結果的に売却活動を有利に進めることができ、早期かつ希望価格での売却につながりやすくなります。
マイホームの住み替えでダブルローンを利用する4つのデメリット
一方で、住み替えにダブルローンを利用するにあたっては、次の4つのデメリットに注意が必要です。
- ローンの返済負担が重くなる
- 返済負担率が高まるので融資の審査が厳しい
- 現在利用している金融機関からは借り入れられないことが多い
- 基本的に自宅を第三者に賃貸することができない
1. ローンの返済負担が重くなる
ダブルローンの状態だと、元の自宅の住宅ローンと新居の住宅ローンを並行して返済しなければならないため、毎月の返済額が大きくなります。特に、元の自宅がなかなか売却できないと、ダブルローンの状態が長期化する場合も。そうなると、家計を大きく圧迫するリスクがあります。
2. 返済負担率が高まるので融資の審査が厳しい
金融機関は、申込者の「返済負担率」を融資するかどうかの重要な判断基準としています。返済負担率とは、申込者の年収に占める年間ローン返済額の割合のことです。ダブルローンだと年間ローン返済額が高くなるため、返済負担率も当然高くなります。
多くの金融機関は、返済負担率の上限を「30〜35%程度」に設定しています。通常の住宅ローン1本であれば上限をクリアできる人でも、ダブルローンだと基準を超えてしまう可能性があります。つまり、ある程度の年収がある人でなければ、返済負担率の高さが要因で審査に通りにくいといえるのです。
3. 現在利用している金融機関からは借り入れられないことが多い
大前提として、住宅ローンは自宅の取得資金にのみ利用できるローンです。そして「自宅は1人につき1軒のみ」というのが金融機関の基本的な考え方。ダブルローンはこの基本ルールから外れています。よって、現在住宅ローンを借り入れている金融機関から、新たに融資を受けるのは難しい場合が多いでしょう。
4. 基本的に自宅を第三者に賃貸することができない
ダブルローンによる返済負担を抑えるために、「自宅を売却するまで賃貸に出せば良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、基本的にそれは不可能です。なぜなら住宅ローンは自宅の取得資金に充当することを前提としているため、賃貸に出すと契約違反に該当するおそれがあるからです。
ただし、転勤や親の介護のための移住など、住み替えにやむを得ない事情があるときは、例外的に金融機関の承諾を得られる場合があります。
自宅の住み替えでダブルローンを使うための4つの条件
住み替えでダブルローンを利用するためには、次の4つの条件を満たしている必要があります。
- 住宅ローンを借りている金融機関の承諾を得ること
- ローンの返済負担率が金融機関の基準以下に収まっていること
- 自宅の売却代金もしくは自己資金で残債を完済できること
- 完済時年齢が80歳未満であること
1. 住宅ローンを借りている金融機関の承諾を得ること
前述のとおり、住宅ローンは本人居住用の自宅を取得する目的でのみ借り入れられるものであり、「自宅は1人につき1軒のみ」というのが原則の考え方です。現在の自宅の住宅ローンを返済しながら、新たに住宅ローンを借り入れるとなると、この原則から外れることになります。
そのため、ダブルローンを利用したい場合には、現在借り入れている金融機関に相談し、事前に承諾を得るようにしましょう。相談もなく勝手に新たなローンを組むのは、契約違反に該当するおそれがあるため注意が必要です。
2. ローンの返済負担率が金融機関の基準以下に収まっていること
これも前述のとおり、多くの金融機関で返済負担率の上限を「30〜35%程度」と定めています。ダブルローンを組む場合、2本の住宅ローン合計の年間返済額をベースにした負担率が、金融機関の基準以内に収まっていなければなりません。
また、自動車ローンや教育ローン、カードローンなど、住宅ローン以外の借り入れがある場合は、その返済額も含めて返済負担率を計算する必要があります。1本目の住宅ローンを申し込むのに比べて、審査はかなり厳しくなると考えておきましょう。
3. 自宅の売却代金もしくは自己資金で残債を完済できること
住み替えでダブルローンを組む場合、あくまで元の自宅の売却代金を手に入れるまでの一時的な対応に過ぎません。よって、元の自宅の残債は売却代金で完済できることが前提となります。事前に不動産会社へ自宅の査定を依頼し、残債を上回る価格で売却できる見通しをつけておく必要があるでしょう。
売却代金で残債を返済しきれない「オーバーローン」状態である場合、自己資金や親からの援助などで補てんし完済することが求められるため、注意が必要です。
4. 完済時年齢が80歳未満であること
そもそも住宅ローンを借り入れる際、多くの金融機関が「完済時の年齢が80歳未満であること」を融資の条件としています。ダブルローンを組むケースでも、同様に2本目のローンを80歳になるまでに完済するよう求められます。また、金融機関によっては「75歳未満」など、より厳しい条件を設定している場合もあるでしょう。
40歳未満であればダブルローンでもある程度柔軟に対応できますが、年齢が高くなるほど、返済期間や借入額の設定に制約が生じます。45歳以上でのダブルローンとなると、35年ローンを組むことはできないため、毎月返済額の負担が一層重くなる可能性もあるのです。
ダブルローンの返済シミュレーション
「ダブルローンは家計の負担になる」と紹介しましたが、実際に毎月どれくらいの返済負担が求められるのでしょうか。ここでは、以下の条件でダブルローンを組む場合、毎月の返済額がどれくらいになるのか簡単にシミュレーションしてみましょう。
【1本目の住宅ローン】
- 借入額 :4,500万円(頭金が別途500万円)
- 返済期間 :35年(ボーナス払いなし)
- 借入金利 :年2.0%
- 金利タイプ :全期間固定金利
- 返済方法 :元利均等返済
【2本目の住宅ローン】
- 借入額 :4,500万円(フルローン)
- 返済期間 :30年(ボーナス払いなし)
- 借入金利 :年2.2%
- 金利タイプ :全期間固定金利
- 返済方法 :元利均等返済
上記の条件をもとに毎月返済額を計算すると、次のようになります。
毎月返済額の想定
1本目 | 2本目 | 2本の合計 | |
金額 | 約14万9,000円 | 約17万1,000円 | 約32万円 |
返済負担率30%を上限とする場合、「32万円×12ヶ月÷30×100=1,280万円」です。つまり、年収1,280万円以上なければ、この条件でダブルローンを借り入れるのは難しいことになります。理想的とされる返済負担率20%で考えると、さらに条件は厳しくなり、年収1,920万円以上なければゆとりある返済はできないでしょう。
このように、住み替えでダブルローンを利用するには、一定以上の年収が必要になるのです。
住み替え時に使える「住み替えローン」とは?
ここまでダブルローンについて解説してきましたが、自宅の住み替え時には、専用の「住み替えローン」を利用できる可能性もあります。以下では、住み替えローンとはどのようなもので、ダブルローンと比較したメリット・デメリットは何なのか解説します。
自宅の残債もまとめて借り入れられる「住み替えローン」
住み替えローンとは、自宅を売却したものの残債が残ってしまった場合に、残債分と新しい自宅の購入費用を一本化して借り入れられるローンのことを指します。
通常、住み替え時に前の自宅の残債がある場合、自己資金などで補てんして完済しない限り、新たにローンを組むことはできません。しかし、住み替えローンなら残債分も含めて新たなローンを組めるため、オーバーローンでも住み替えることが可能です。
住み替えローンのメリット・デメリット
オーバーローンで住み替えを検討する際の有力な選択肢である住み替えローンですが、当然メリット・デメリットの両面があります。ここでは、主なメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。
住み替えローンの主なメリット
- 住み替えの自由度が上がる
- ダブルローンのような手続きの手間や事務手数料負担がかからない
- 借り入れ当初の返済負担がダブルローンほど重くない
- 住み替えにあたって仮住まいを準備する必要がない
住み替えローンの主なデメリット
- 住宅ローンに比べて金利が高い
- 住宅ローンに比べて審査が厳しい
- 自宅売却と新居購入を並行して進めなければならない
住み替えローンは、ダブルローンに比べれば返済負担が軽いものの、通常の住宅ローンよりは返済額が大きくなります。なぜなら住み替えローンはオーバーローンが前提となるため、金融機関にとってのリスクが大きいと考えられるからです。そのため、住宅ローンに比べて金利が高めに設定されており、新居に住み替えてからの返済負担が重くなる点には注意しましょう。
また、旧居の抵当権抹消と新居の抵当権設定を同時に行う必要があるため、自宅売却と新居購入を同じタイミングで進めなければならないのもデメリットです。
まとめ
自宅を住み替える際、ダブルローンを組むことで住まい選びの選択肢が広がります。その一方で、一時的に返済負担が重くなることから、年収や自己資金に余裕のある方でなければ、ダブルローンの利用は避けたほうが安全かもしれません。
現在の自宅を良い条件で売却できれば、オーバーローンに陥るリスクを減らすことができます。スムーズな住み替えの第一歩は、適正価格で自宅を売却し、現在の住宅ローンを確実に完済することにあるといえるでしょう。
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